1ヶ月単位の変形労働時間制のシフト表を確認するときは、月の合計時間だけでなく、事前に定めた所定労働時間と、比較する勤務予定を分けて入力することから始めます。対象期間や適用条件を確認したうえで日別・週別に数値を照合すると、労務担当者へ確認すべき箇所を具体的に示せます。
ただし、基準との差をそのまま「法定時間外労働」と扱ってはいけません。本稿では、前提が未確認なら照合を止め、確認できた範囲だけで「確認事項あり」を抽出するエクセルの構成と数式例を紹介します。シフトの自動割当ではなく、入力した勤務予定の数値照合を行う方法です。
制度・公開情報は2026-09-18時点で確認しています。以下の勤務例はすべて架空です。
勤務予定の数値照合と確認事項の整理Excelをダウンロード(無料) セル位置と数式は、この記事の記載と同じです。このシートは、制度の成立・個人への適用可否・法定時間外労働の確定時間数・割増賃金額を判定しません。専門家によるレビューは受けていません。対応範囲と未照合事項を確認し、給与計算や勤務の確定には本シートだけで判断しないでください。
1ヶ月単位の変形労働時間制のシフト表で、照合する範囲を決める
1ヶ月単位の変形労働時間制では、1ヶ月以内の一定期間を平均して週の法定労働時間を超えないよう、各日・各週の労働時間をあらかじめ具体的に定めます。勤務表には時間数だけでなく、始業・終業時刻も定め、労働者への周知が必要です。(都道府県労働局)
照合用の表では、その勤務表から従業員1人分の時間を取り出します。複数人を合計すると、誰の、どの日に確認が必要なのか分からなくなるため、まずは「1人・1対象期間」で作ってください。
用意するシートは次の4つです。
| シート名 | 入力・確認する内容 |
|---|---|
| 設定 | 起算日、終了日、日・週の比較基準、7項目の前提確認 |
| 日別 | 事前に定めた所定労働時間、比較する勤務時間、日別の差 |
| 週別 | 7日間の合計、週の比較基準、週別の差 |
| 確認事項 | 入力件数、照合停止件数、確認が必要な日・週の一覧 |
ここで提供するのは、手元のエクセルに設定するための構成・数式例です。**配布用Excelの実物と動作は確認できていないため、ダウンロードできる完成ファイルとしては案内していません。**掲載数式もExcel上での実行試験・専門家レビューは未実施です。後述する期待値と照合し、実務利用前に確認してください。
この表で扱うのは、基準を上回る日・週と、照合できない箇所の整理までです。法定時間外労働の確定時間数、その正味の合計、割増賃金の支給額は出しません。法定休憩の確保や、勤務表全体の法的適合を判定する表でもありません。
対象期間の起算日と暦日数から総枠を計算する
最初に「設定」へ、事業所で定めている対象期間を入力します。起算日はその期間の開始日、暦日数は休日も含めた日数です。月初始まりとは限らないため、給与締日やカレンダーの見た目だけで決めず、根拠となる規程と合わせてください。
以下のセル配置で説明します。
| セル | 項目 | 架空の入力例・数式 |
|---|---|---|
| B2 | 起算日 | 2026/4/1 |
| B3 | 終了日 | 2026/4/30 |
| B4 | 週の比較基準 | 40 |
| B5 | 1日の比較基準 | 8 |
| B6 | 暦日数 | =B3-B2+1 |
| B7 | 所定総枠の参考値 | =B4*B6/7 |
労働基準法の法定労働時間は原則として1日8時間・週40時間です。週44時間の特例は、常時使用する労働者が10人未満の商業、映画・演劇業の一部、保健衛生業、接客娯楽業が対象であり、少人数の事業場すべてに適用されるわけではありません。(厚生労働省)
B4は40または44、B5は8に限定する設計とします。44を選ぶ場合は、適用根拠を労務担当者に確認するまで、後述の前提欄を「確認済」にしないでください。
所定労働時間の合計を収める総枠は、「週の法定労働時間×対象期間の暦日数÷7」で求めます。(都道府県労働局)
| 暦日数 | 週40時間の場合の計算値 |
|---|---|
| 28日 | 160時間 |
| 29日 | 165.714285…時間 |
| 30日 | 171.428571…時間 |
| 31日 | 177.142857…時間 |
**表示用の丸めと、計算で参照する値は分けます。**B7の表示を小数点以下2桁にしても、所定合計との比較には元の計算値を使い、表示された「171.43」を別セルへ手入力し直さないようにします。
また、171.43時間は171時間43分ではありません。入力単位は小数の「時間」に統一し、7時間30分は7.5、15分は0.25とします。総枠に収まっていることは前提確認の一つであり、それだけで日別・週別の確認を省略する設計にはしません。
7つの前提条件を確認し、未確認なら照合を止める
「設定」のA10~A16に次の7項目を置きます。B列は「確認済/未確認」、C列は根拠資料と該当箇所、D列は確認日です。資料名だけでなく、規程の条番号、勤務表の版、確認した担当者なども残してください。
| 行 | 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 10 | 制度の根拠 | 就業規則・労使協定等と、必要な届出の扱いを確認した |
| 11 | 対象者 | 今回の従業員に制度を適用してよいか確認した |
| 12 | 対象期間 | 起算日・終了日が規程と一致し、1ヶ月以内である |
| 13 | 比較基準 | 1日8時間、週40時間または44時間の根拠を確認した |
| 14 | 事前の所定 | 日・週の所定が事前に特定・周知され、期間の所定合計も総枠内である |
| 15 | 入力の対象 | 時間の集計方法を統一し、本稿の対象外ケースが混在していない |
| 16 | 週の区切り | 起算日から7日ごとの区切りで比較してよいことを確認した |
15行目では、休憩を除く時間にそろえるほか、法定休日労働、日をまたぐ勤務、期間途中の入退社、所定の事後変更などが含まれていないかを確認します。これらがある場合は、本稿の数式だけで処理せず、扱いを別途整理してください。
チェック欄は法律上の要件を網羅した一覧ではなく、この照合を始めてよいかを確認するための欄です。導入準備中で事前に定めた勤務表がまだないなら、作成中の案をそのまま「事前の所定」とみなさず、未確認のまま労務担当者へ渡します。
本例では、10~15行目を日別・週別共通の前提、16行目を週別の追加前提とします。「設定」のB18に、日別照合を進めるための条件を置きます。
=AND(COUNTIF(B10:B15,"確認済")=6,COUNTIF(C10:C15,"?*")=6,COUNT(D10:D15)=6,COUNT(B2:B5)=4,B3>=B2,B6<=31,B5=8,OR(B4=40,B4=44)) B19には週別の条件を置きます。
=AND(B18,B16="確認済",C16<>"",ISNUMBER(D16)) B18の「31日以下」は入力上の補助条件にすぎません。1ヶ月以内であること自体は12行目で確認します。日付セルには文字列ではなく日付を入力してください。
6項目のどれかが未確認なら日別・週別とも停止し、週の区切りだけが未確認なら週別のみ停止する設計です。すべて未確認の状態では、勤務時間を入力しても差を表示せず、「照合停止:前提条件が未確認」となることを最初に確かめます。
「確認済」と入力しても、資料の内容が正しいと認定されるわけではありません。担当者の判断を数式が代行するのではなく、確認した根拠を残してから計算へ進む仕組みです。
日別の所定労働時間と勤務予定を入力する
「日別」は1行を1日とし、勤務のない日も省略しません。A2に =設定!$B$2、A3に =A2+1 を入れ、終了日まで並べます。日付は連続した状態を維持し、並べ替えや行の削除をしない運用にしてください。
| 列 | 項目 | 入力・表示する内容 |
|---|---|---|
| A | 日付 | 対象期間の全日 |
| B | 事前の所定労働時間 | 根拠となる勤務表の時間 |
| C | 比較する勤務時間 | 追加勤務を含めて確認したい予定時間 |
| D | 1日の基準超の事前特定 | 所定が8時間超で確認できた日は「○」、8時間以下は「―」 |
| E | 照合開始可 | 前提と入力の条件を満たすか |
| F | 日の比較基準 | 条件確認後に表示する時間 |
| G | 基準を上回る差 | 0以上の時間 |
| H | 照合結果 | 確認事項あり/超過なし/照合停止 |
B列とC列は混ぜません。比較する予定が変わっても、B列の所定を都合よく書き換えないことが重要です。
日単位の時間外労働の算定では、事前に8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を基準にします。本稿では、この基準の考え方を勤務予定の数値照合に使います。(都道府県労働局)
2行目の数式案は次のとおりです。入力する時間は0以上とし、未入力と0を区別します。
- E2:
=AND(設定!$B$18,COUNT(B2:C2)=2,MIN(B2:C2)>=0,D2=IF(B2>設定!$B$5,"○","―")) - F2:
=IF(E2,MAX(設定!$B$5,B2),"") - G2:
=IF(E2,MAX(0,C2-F2),"") - H2:
=IF(NOT(設定!$B$18),"照合停止:前提条件が未確認",IF(NOT(E2),"照合停止:入力を確認",IF(G2>0,"確認事項あり","この比較条件では超過なし")))
終了日の行までコピーします。所定が8時間を超えるのにD列が空欄なら、基準と差は空欄になる設計です。数式を進めるためだけに「○」を付けず、事前特定の資料へ戻って確認してください。
前提を確認済みとした架空例の期待値は、以下のようになります。
| 所定 | 比較する勤務 | D列 | 比較基準 | 差 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9時間 | 9時間 | ○ | 9時間 | 0時間 | この比較条件では超過なし |
| 9時間 | 10時間 | ○ | 9時間 | 1時間 | 確認事項あり |
| 6時間 | 8時間 | ― | 8時間 | 0時間 | 日の基準は超えないが、所定より長い |
| 8時間 | 未入力 | ― | 表示しない | 表示しない | 入力確認が必要 |
3行目の例が示すように、「差0」は所定どおりという意味ではありません。所定との差を別に確認したい場合は参考列を設け、ここでの基準超過と混同しない名前を付けます。
勤務がないと確認できた日はB・C列に0を入力します。一方、予定が分からない日は空欄のまま残してください。分からない時間を0で埋めると、確認すべき入力漏れを隠してしまいます。
週別の照合は7日そろった週だけで行う
「週別」は、本例の起算日から7日ずつ区切ります。ただし、これは照合表の集計方法です。**事業所で確認した週の区切りと一致する場合に限って使います。**月初から7日ずつ集計した結果を、無条件に法令上の週の判定へ置き換えるものではありません。
週の区切りが異なる場合や対象期間をまたぐ暦週がある場合は、設定の16行目を未確認のままにし、必要な前後期間の資料を労務担当者へ渡してください。
週単位では、週40時間、特例措置対象事業場では44時間を超える所定を事前に定めた週はその時間、それ以外の週は40時間または44時間が基準となります。(都道府県労働局)
週別の列は、Aから順に「開始日、終了日、日数、所定合計、比較合計、基準超の事前特定、入力確認、比較基準、差、結果」とします。
第1週が日別の2~8行目なら、次のように設定します。
- A2:
=設定!$B$2 - B2:
=MIN(A2+6,設定!$B$3) - C2:
=B2-A2+1 - D2:
=SUM(日別!B2:B8) - E2:
=SUM(日別!C2:C8)
F2は、週の所定合計がB4の基準を超え、その事前特定を確認できた場合に「○」、基準以下なら「―」を入力します。日別で「○」を付けたことだけで、週の確認まで済ませないでください。
続く数式案は以下です。
- G2:
=AND(COUNTIF(日別!E2:E8,TRUE)=7,F2=IF(D2>設定!$B$4,"○","―")) - H2:
=IF(AND(設定!$B$19,C2=7,G2),MAX(設定!$B$4,D2),"") - I2:
=IF(ISNUMBER(H2),MAX(0,E2-H2),"") - J2:
=IF(NOT(設定!$B$19),"照合停止:前提条件が未確認",IF(C2<>7,"照合停止:期間境界の取扱いが未確認",IF(NOT(G2),"照合停止:入力を確認",IF(I2>0,"確認事項あり","この比較条件では超過なし"))))
第2週は日別の9~15行目、第3週は16~22行目というように参照範囲を切り替えます。単純に下へコピーすると参照が1行ずつしか移動しないため、7日分ずつ進んでいるか確認が必要です。
架空例として、週の所定が「8・8・8・8・8・0・0」の40時間、比較する勤務が「8・8・8・8・8・5・0」の45時間だったとします。追加する5時間の日は法定休日ではない前提です。この場合、日別では基準内でも、週別では基準40時間との差5時間を「確認事項あり」として抽出する設計です。
一方、週45時間の所定を適切に事前特定した週なら、同じ比較合計45時間でも基準は45時間になります。比較合計だけでなく、どの基準を選んだかも一緒に見ます。
対象期間末尾の7日未満の週は判定しない
起算日を2026年4月1日、終了日を4月30日とする架空例では、第1~4週は各7日、第5週は4月29~30日の2日間です。
本例では、この2日間を「短い週だから問題なし」と扱いません。第5週には**「照合停止:期間境界の取扱いが未確認」**と表示し、比較基準と差を空欄にする設計です。設定の7項目がすべて確認済みでも、この停止は解除しません。
たとえば両日を7.5時間と入力すれば、参考集計は15時間です。しかし、15時間を40時間と比べたり、40×2÷7を自動的に週の基準としたりはしません。端数週について、この照合設計では適用すべき基準と期待値を検証していないためです。
実際に週をどう区切るか、前後の期間とどう関係するかを確認する作業が残ります。「差0」と「判定していない」は明確に分け、確認事項一覧にも停止理由を残してください。
日別・週別の差を合算して時間外労働や割増賃金を決めない
日別の差が1時間、週別の差が3時間と表示されても、「法定時間外労働は合計4時間」とは結論できません。同じ勤務時間を日別・週別の両方が指摘している可能性があるからです。
法定時間外労働は日・週・対象期間全体の順に確認し、週では日ですでに時間外となる時間を除き、対象期間全体では日・週ですでに時間外となる時間を除いて算定します。(都道府県労働局)
本稿の「差」は、この重複を除いていない数値です。月の比較合計と総枠との差を別に表示した場合も、日別・週別の差へ足してはいけません。
確認事項シートには日別・週別の件数を置きますが、「時間外労働の総合計」という欄は作らない設計とします。法定時間外労働の確定時間数は、対象外としている勤務も整理したうえで、別の手順で算定する必要があります。
割増賃金は時間外労働等に対して通常の賃金に上乗せする賃金ですが、本稿はその支給額の計算まで扱いません。(厚生労働省)
確認事項を抽出し、数値の根拠とともに労務担当者へ渡す
「確認事項」では、まず入力件数を確認します。4月の30日分が日別の2~31行目にある場合、次の数式案で所定・比較それぞれの数値入力が30件あるかを調べます。
=IF(AND(COUNT(日別!B2:B31)=設定!B6,COUNT(日別!C2:C31)=設定!B6),"一致","要確認") COUNTは数値が入力されたセルの個数を数える関数です。空欄を0時間とみなさず、入力件数の確認に使います。(Microsoft)
比較時間を1日だけ空欄にしたら「要確認」となり、その日と、それを含む7日間の差が表示されないことを確認してください。ただし、件数の一致だけでは日付の重複や転記先の誤りまで保証できません。起算日から終了日まで連続していることも元の勤務表と突き合わせます。
次に、日別のH列、週別のJ列を使い、以下を別々に数えます。
- 「確認事項あり」の日数・週数
- 「照合停止」で始まる日数・週数
- 基準超の事前特定や入力が未確認の箇所
「確認事項あり」が0件でも、照合停止が残っていれば全件確認済みとは扱いません。表を完成させたら、通常の入力例だけでなく、次のように意図的に条件を変えて確かめます。
| 確認用の入力 | 設計上の期待値 |
|---|---|
| 前提条件をすべて未確認にする | 日別・週別とも前提未確認で停止し、差を出さない |
| 所定9時間・勤務9時間・事前特定○ | 日の基準9時間、差0時間 |
| 週基準40時間・比較45時間・日別は基準内 | 週だけ差5時間、確認事項あり |
| 比較時間を1日分空欄にする | 入力件数が要確認になり、関連する照合が止まる |
| 30日間の末尾2日を見る | 期間境界で停止し、基準・差を出さない |
これは実施済みの試験結果ではなく、作成した表で確認する期待値です。期待値と異なる場合は、前提の状態、参照範囲、数式のコピー先を修正してから使います。
抽出は日別・週別の結果列をフィルターし、該当行を「確認事項」へ転記する方法でも構いません。この方法では数値照合は数式で行いますが、一覧への転記は手作業です。自動集計と自動抽出を同じ機能として説明しないようにします。
渡す情報は、対象者、対象期間、該当日または週、所定、比較時間、採用した基準、差、停止理由です。根拠資料の版と確認日も添え、「週の比較合計45時間、事前所定40時間、差5時間。基準の採り方を確認したい」のように質問を具体化します。
就業規則・労使協定の作成や届出は、この表を作っても完了しません。必要な書類は労働局が公開する協定届等の様式を参照し、事業所の条件に合わせて別途準備してください。(都道府県労働局)
希望休や欠員への対応と、労務の確認を分けて進める
確認箇所が分かった後には、必要人数、担当できる業務、シフト希望を踏まえた配置調整が残ります。繁忙期の勤務を長く、閑散期を短くする案を考えるときも、事前の所定と調整案を別々に保存すると、変更点を追えます。
ただし、事前に特定した労働日や労働時間を、業務都合で任意に変更できる制度ではありません。欠員対応で勤務予定が変わる場合も、照合結果だけを根拠に元の所定を上書きせず、変更の扱いを確認してください。(都道府県労働局)
シフト管理で、希望の収集と配置案づくりに負担がある場合、シフトラはLINE・メール等によるシフト希望の収集と、自然な日本語で入力した条件に基づくシフト案の生成を支援します。これは2026-09-18時点の公開情報・製品情報に基づく紹介です。(シフトラ)
生成されるのはシフト案であり、個別の就業規則・労使協定への適合や、法定時間外労働の確定を自動で保証するものではありません。本稿の対象外である1年単位・1週間単位の変形労働時間制やフレックスタイム制へ、数式をそのまま流用することも避けてください。
まずは1人分の勤務予定で、前提未確認なら止まり、入力漏れを0にせず、端数週を判定しない状態を確かめましょう。そのうえで基準と差をそろえて渡すことが、労務担当者に確認してほしい日・週を絞り込むための第一歩です。