扶養内で働くパートのシフト調整は、本人が希望する上限額と収入の数え方を確かめ、給与台帳と新しい時給で残り時間を出すところから始めます。10月に時給を上げた店では、以前と同じ勤務時間でも支給額が増えるため、10〜12月の配置までまとめて組み直しましょう。
ただし、1〜12月の支給額で管理する人と、健康保険の扶養のために契約上の年間収入を確認する人では、計算が異なります。前者は残りの金額を勤務時間に直し、後者は時給・所定労働時間・手当から年間の見込みを確認します。以下の架空例では、本人への確認表から、3人の再計算、月別の不足、コピーして使える空欄表までを示します。
制度の記述は2026-10-08時点です。
扶養内のシフト調整は、本人の上限と数え方から始める
例にするのは、10月から時給を1,250円から1,300円へ改定する店です。給与は月末締め・翌月25日払いで、1〜10月支給分は10月の確定分まで把握できている想定とします。
Aさんは税の条件を確認して年間135万円以下、Cさんは配偶者の勤務先の手当規程を確かめて103万円以下を指定した想定です。どちらも1〜12月の支給額で管理し、この例では算入する通勤手当や賞与、掛け持ち収入はありません。Bさんは健康保険の扶養を続けたい人で、週19時間の契約と月4,000円の通勤手当があります。
135万円と103万円は、この例で本人が指定した管理額です。全員に共通する法定の上限ではありません。 税の条件だけを確認した人が健康保険の扶養も希望するなら、Bさんと同じ確認を加える必要があります。
店が決めないこと・本人に確かめること
「扶養内でお願いします」という返答だけでは、何時間まで配置できるか決まりません。本人と次の4項目を確認し、金額の隣に数え方も残します。
| 確認する項目 | 本人に確かめる内容 | 店が記録する内容 |
|---|---|---|
| 上限額と目的 | 税、健康保険、配偶者の勤務先の手当など、何の条件を守りたいか | 金額と「以下/未満」の別、確認先 |
| 収入の数え方 | 1〜12月の支給額か、労働契約から見込む年間収入か | 集計する期間と使う資料 |
| 通勤手当・その他の手当 | 上限に含める手当は何か。賞与などの予定はあるか | 算入する項目と見込み額 |
| 掛け持ち | 他の勤務先の収入・今後の勤務予定はあるか | 本人が合算したうえでの自店の勤務可能額・時間 |
どの上限を選ぶかは本人が決めます。税の扱いは税務署、健康保険の扶養認定は加入先の健康保険、配偶者手当などは配偶者の勤務先の規程に沿って、本人に確認してもらいましょう。店は給与額や契約内容を示し、確認できた条件を配置に反映します。
通勤手当(交通費)も一律には扱えません。所得税では非課税となる通勤手当がありますが、健康保険の契約上の年間収入には諸手当・賞与を含みます。給与台帳の総支給額をそのまま使う前に、今回の上限に算入する項目をそろえてください。(nta.go.jp)(厚生労働省)
2026年に変わった数え方
いわゆる「年収の壁」と呼ばれる金額も、何で数えるかによって意味が違います。今回の作業に関係する変更は、次の3つです。
健康保険の扶養は、労働契約からの見込みを確認します。 2026年4月1日以降の認定では、給与収入のみの人について、契約内容から見込む年間収入が130万円未満で、生計維持などの要件を満たす場合に、原則として被扶養者として扱う方法が導入されています。契約更新や時給などの条件変更の都度、変更内容が分かる書面等で確認します。(厚生労働省)
勤務先の社会保険への加入は別に確認します。 短時間労働者の月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月に撤廃されました。週の所定労働時間20時間以上、企業規模51人以上、学生ではないこと、2か月を超える雇用見込みなどが確認点です。企業規模は、自店の人数だけで判断しないようにします。130万円未満でも、勤務先で加入対象になるかを人事・労務側で確かめます。(厚生労働省)
所得税の金額を、健康保険の上限に置き換えないでください。 2026年分は、給与収入のみで他に所得がなければ、本人の所得税がかからない収入額は178万円以下です。配偶者控除における配偶者の所得要件は、給与収入だけなら136万円以下に対応しますが、控除を受ける人の所得など別の条件もあります。これらは2026年12月1日施行・2026年分から適用される金額です。(nta.go.jp)
上限の選び方や手取りの比較は扱いません。店長が行うのは、本人が確認した条件を、今年の給与とこれからの勤務時間へ落とし込む作業です。
1〜12月の支給額で数える人の残り時間を出す
AさんとCさんは、給与台帳の1〜10月支給額を上限から引きます。ここで使うのは、税金などを引いた振込額ではなく、確認したルールに含める支給項目の合計です。
先に締め日と支給日を確認してください。「年末まであと3か月だから、残り金額を3等分する」と進めると、対象となる勤務月を取り違えます。
翌月払いの店で今年に数える勤務月を決める
所得税の給与収入は、契約などで支給日が決まっている場合、その支給日で年を区切ります。所得税基本通達36-9に基づき、この例の2026年の給与収入は、2025年12月〜2026年11月の勤務分です。(nta.go.jp)
| 勤務した月 | 所定の支給月・支給日 | この例での扱い |
|---|---|---|
| 2025年12月 | 2026年1月25日 | 2026年分の集計に含む |
| 2026年1〜9月 | 2026年2〜10月の各25日 | 1〜10月支給額の集計に含む |
| 2026年10月 | 2026年11月25日 | 今回、残り金額から配分する |
| 2026年11月 | 2026年12月25日 | 今回、残り金額から配分する |
| 2026年12月 | 2027年1月25日 | 2027年分として別に計画する |
したがって、今回の残り金額を配分するのは10月・11月の勤務です。当月払いで12月勤務分の支給日も年内なら、その分まで今年の計算に含めます。配偶者の勤務先の手当規程については、同じ数え方を採ると決めつけず、本人が規程を確認してください。
12月勤務分を翌年に数えても、勤務時間を無制限に増やせるわけではありません。翌年の本人の希望額と、契約上の時間を確かめて12月分を決めます。
時給改定後の単価で残りの金額を割る
追加の手当などがない場合、計算式は次のとおりです。
残り勤務時間=(本人の上限額−集計済みの支給額)÷新しい時給 Aさんは、135万円−118万7,500円=16万2,500円。これを1,300円で割ると、残りは125時間です。旧時給1,250円なら130時間でしたから、同じ金額に収めるには5時間減らす必要があります。
Cさんは、103万円−87万5,000円=15万5,000円。1,300円で割ると約119.2時間なので、この例では端数を切り下げ、119時間を配分します。旧時給なら124時間でした。
| 人 | 本人が指定した基準 | 給与台帳・契約の入力値 | 新時給での再計算結果 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 年間支給135万円以下 | 1〜10月支給118万7,500円 | 残り125時間。10月63時間・11月62時間 |
| Cさん | 年間支給103万円以下 | 1〜10月支給87万5,000円 | 残り119時間。10月60時間・11月59時間 |
| Bさん | 健康保険の年間収入130万円未満 | 週19時間、通勤手当月4,000円 | 契約上の見込み133万2,400円。週18時間への見直しを次節で計算 |
Aさんは118万7,500円+125時間×1,300円=135万円で、余裕はありません。Cさんは87万5,000円+119時間×1,300円=102万9,700円で、残りは300円です。追加の支給予定が判明したら、その金額を先に引いて計算し直します。
自店で賞与、割増賃金、有休分の賃金などが別に見込まれる場合は、単純な「勤務時間×時給」に加算する額を確保してください。また、125時間・119時間は10月と11月の合計です。10月にすでに働いた時間や確定済みの勤務も、この枠に含めます。一人ずつの月の勤務時間をExcelで集計する方法は、シフト表をエクセルで自動計算する方法で扱っています。
健康保険の扶養を続けたい人は、契約の時間を見直す
Bさんに必要なのは、「130万円から今年の支給額を引く」計算ではなく、改定後の契約で今後1年間にいくら見込まれるかの確認です。
この架空例のBさんは、130万円未満の基準が適用される60歳未満の配偶者で(配偶者以外の19歳以上23歳未満の家族は150万円未満、60歳以上などは180万円未満が基準)、給与以外の収入や掛け持ちはなく、契約期間の定めはありません。勤務先の社会保険の加入要否と、生計維持などの要件は別途確認する前提です。
契約に「シフト制による」としか書かれておらず時間が分からない場合や、契約期間が1年未満などの場合は、この方法で年間収入を判定できないことがあります。通知書に時給・時間・日数・手当の金額が具体的に記載されているかを確かめます。(日本年金機構)
時給を上げると契約上の見込みが130万円を超える
Bさんの年間見込みを、週の所定労働時間×52週、通勤手当×12か月で試算します。賞与など、ほかの加算項目はない想定です。
| 条件 | 計算 | 年間見込み |
|---|---|---|
| 改定前:時給1,250円・週19時間 | 1,250円×19時間×52週+4,000円×12か月 | 128万3,000円 |
| 改定後:時給1,300円・週19時間 | 1,300円×19時間×52週+4,000円×12か月 | 133万2,400円 |
| 見直し後:時給1,300円・週18時間 | 1,300円×18時間×52週+4,000円×12か月 | 126万4,800円 |
時給だけを変更すると、130万円以上になります。Bさんが扶養継続を希望し、この条件で調整するなら、週19時間のままでは収まらないため、この例では週18時間へ見直します。
本人と勤務日・時間を相談し、同意を得て変更後の労働条件通知書を交付します。労働契約法では、労使の合意による労働条件の変更と、契約内容のできる限り書面による確認が定められています。(厚生労働省)
通知書には新時給、週18時間、具体的な勤務日・時間、通勤手当、変更日を反映し、本人から加入先の健康保険へ変更内容を確認してもらいます。52週換算はこの例の試算なので、自店では契約期間や勤務日数、すべての手当を当てはめてください。
契約にない一時的な残業と、恒常的な増加を分ける
厚生労働省のQ&Aでは、契約に明確な規定がなく、契約時点で見込み難い時間外労働の賃金等は、契約による年間見込みに含めない扱いです。結果として130万円以上になっても、臨時収入が社会通念上妥当な範囲なら、それだけで認定を取り消す必要はないとされています。(厚生労働省)
一方、臨時収入を支給する前提で、賃金や労働時間を不当に低く書くなどし、実際の年間収入が妥当な範囲を超えて130万円を大きく上回った場合は、認定取消しの対象となり得ます。(厚生労働省)
Bさんの時給改定は、あらかじめ分かっている契約条件の変更です。一時的な残業として除外せず、新時給で計算します。「契約は週18時間だが、実際は毎週それ以上入ってもらう」という前提で書類を作らないでください。予定外の延長が生じたら理由と実績を残し、扱いは加入先の健康保険に確認します。
減った時間を10〜12月の配置で埋める
個人の時間が決まったら、店全体の必要時間と比較します。次の表も架空例で、営業日は10月27日、11月25日、12月26日。各営業日に2人×6時間の配置が必要で、12月だけ繁忙対応を18時間加える想定です。時間は無給休憩を除いた配置時間でそろえます。月の上限時間をAIに渡す条件として書く方法は、AIシフトで扶養の上限を守るで扱っています。
Bさんは変更後の契約を月・火・木・金の各4.5時間、週18時間とします。12月31日は休業のため、勤務日は2026年10月が18日、11月が17日、12月が17日となり、月ごとの時間は81・76.5・76.5時間です。週18時間を一律に「月72時間」と置くと、この差を拾えません。
A・Cさんの12月分は翌年の収入計画を確認したうえで、これまでどおりそれぞれ95時間・70時間で合意した想定です。Dさんは本人の勤務可能時間と契約を確認し、月100時間まで増やせるものとします。
| 必要時間・配置 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|
| 必要時間の計算 | 27日×2人×6時間 | 25日×2人×6時間 | 26日×2人×6時間+18時間 |
| 店の必要時間 | 324時間 | 300時間 | 330時間 |
| Aさん | 63時間 | 62時間 | 95時間 |
| Bさん | 81時間 | 76.5時間 | 76.5時間 |
| Cさん | 60時間 | 59時間 | 70時間 |
| Dさん | 100時間 | 100時間 | 88.5時間 |
| 4人の合計 | 304時間 | 297.5時間 | 330時間 |
| 不足時間 | 20時間 | 2.5時間 | 0時間 |
| 店長が埋める時間 | 20時間 | 2.5時間 | 0時間 |
10月は324−(63+81+60+100)=20時間不足します。11月も300−(62+76.5+59+100)=2.5時間足りません。12月はA〜Cさんの合計が241.5時間なので、Dさんを88.5時間配置すれば、月の合計は充足します。
不足を誰で埋めるか決める
この例では、10月20時間・11月2.5時間を店長が担当します。実際のシフト表には、担当する日と時間帯まで記入してください。月の総時間が合っていても、土日の同じ時間帯に希望が集中したり、必要な担当者がいなかったりすれば、その枠は埋まりません。
店長で補えなければ、ほかのスタッフの勤務可能時間を確認し、それでも残る日・時間帯を短期募集の条件にします。募集で確保できるまでは、未充足の枠として残します。変更案を本人と相談して確定する手順は、シフト調整の進め方で扱っています。
本人が決めた上限を超えて入るよう、店から頼まないことも調整の前提です。11〜12月に急な働き控えが起きないよう、10月の時点で残り時間を本人と共有しておきます。A〜Cさんの時間を再び増やして表の数字だけを合わせるのではなく、誰が不足を受け持つかを決めてから確定します。
自店の数字で残り時間を計算し直す
最初に、本人の上限と数え方を確認し、給与台帳の集計対象をそろえます。次に、締め日・支給日から今年に数える勤務月を決め、新時給で時間を計算。最後に月別へ配分し、必要時間との差を担当者まで決める、という順番です。
以下の空欄表を表計算へコピーして使えます。表の上に「対象年・締め日・支給日・対象勤務月」を記入し、通勤手当の算入方法と掛け持ちの有無も添えてください。
1〜12月の支給額で管理する人の再計算表
| 氏名 | 上限額(円) | 集計済み支給額(円) | 今後加算する手当等(円) | 新時給(円) | 残り時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| __ | __ | __ | __ | __ | __ |
| __ | __ | __ | __ | __ | __ |
見出しを表計算の1行目、氏名をA列に置く場合、F2の式は =(B2-C2-D2)/E2 です。A・Cさんの例のように整数時間へ切り下げるなら、=ROUNDDOWN((B2-C2-D2)/E2,0) を使います。手当等がなければD2に0を入力し、支給済みと支給予定を重複させないようにします。
掛け持ちがある人は、本人が他社分を合算し、自店へ割り当てられる残り額を確認してください。計算結果がゼロ以下なら追加の勤務枠を入れず、本人と数字を照合します。
労働契約から年間収入を確認する人の試算表
| 氏名 | 時給(円) | 週の所定時間 | 毎月の手当(円) | 年間見込み(円) |
|---|---|---|---|---|
| __ | __ | __ | __ | __ |
同じく見出しを1行目、氏名をA列に置けば、E2は =B2*C2*52+D2*12 です。毎月一定の手当がある場合の式なので、賞与や支給回数の違う手当は別に加算します。入力しただけで扶養の判定や配置まで終わる表ではなく、結果を本人・担当者が確認してシフトへ転記します。
パート・アルバイトのシフト管理で条件を配置に反映する際、シフトラでは自然文のルール、個人条件、必要人数やシフト希望をもとに、AIがシフト案を生成します。(シフトラ) たとえば「Aさんは10月合計63時間以内」「Bさんは月・火・木・金に各4.5時間」と、確認した条件を担当者が入力する使い方です。従業員別の勤務時間も集計できるため、生成した案が条件どおりかを確かめられます(2026-10-08時点)。残り時間の計算、生成案の時間・人数の確認、最終確定は担当者が行います。
住民税の非課税ライン、被扶養者の届出や社会保険の加入手続きは、この計算表の対象外です。まずは本人ごとの上限・数え方・対象勤務月をそろえ、時給改定で減る時間と、それを埋める担当者を同じシフト表に反映しましょう。